〈Brewer's Note 〉Antelope Sling

こんにちは!

つくり手ならではの目線から商品紹介をしていきます!
今回はパイナップルとチェリーを使用した「Antelope Sling」の2バッチ目を紹介していきたいと思います。

Antelope Sling ver.2 の特徴

  • ロゼワインのような薔薇色

  • 清々しいフィニッシュ

  • ほのかな酸味

  • バランスの取れたパイナップルとチェリーの主張

今回のAntelope Slingは台湾産のパイナップルとアメリカンチェリーを使用して仕込みました。台湾産パイナップルは柔らかな酸味と穏やかなパイナップルの香りが特徴的でした。加えて、芯まで柔らかく食べられるとのことだったので、「めっちゃエコだな」と思い採用してみました。前回はパイナップルの主張が強くチェリーの存在感が淡い感じだったのですが、今回はお互いの力関係がバランスよくなってきたのでそれぞれの良いところが分かりやすくなったのかなと思っています。

原材料の比率やアルコール度数はそのままにしています。ただ、前作よりも残糖分を少し減らしているのですっきりしている印象に仕上げました。酸も穏やかで、食事とのペアリングもしやすいと思います。

そして今回のAntelope Slingは、はっきりとした赤色が特徴的です!👐
探し求めていた綺麗な薔薇色に近づけることができました。色彩が鮮やかだから味わいも華やかで香り高い、なんてことは言えませんが、グラスに映った鮮明な薔薇色を見ていると心もパッと晴れやかになっちゃいます。

合わせる食事は、パイナップル似ている香り成分が多いスイスのエメンタールというハードタイプのチーズや、バルサミコとクランベリーの甘酸っぱいソースをかけたローストビーフなどがおすすめです!チーズとローストビーフを一枚のボードに綺麗に盛り付けちゃえば、最高のパーティーになっちゃいそうです。

 

エピソード

僕たちはよくフルーツを使ったミードを作ることがあります。フルーツミードは「Melomel(メロメール)」というスタイル名で括られます。ミードの世界はまだまだクラフトビールの世界ほど広がっていないので、特に明確な定義もありませんがフルーツの特徴が出ていればメロメールという認識です。

フルーツを使うミードは、どのタイミングでフルーツを使うのかによって特徴の出方が違います。それが面白いところでもあり、難しいところでもあります。お酒になる前からフルーツを使ってあげると、酵母によってフルーツの香りが別の香り成分に変化する可能性を含んだり、フルーツの匂いが発酵で生じる二酸化炭素とともにどこか遠くへ飛んでいってしまったりする可能性があります。その分、フレッシュなフルーツから出ないような複雑な匂いや雰囲気を醸し出してくれることもあります。
逆に発酵終了時などにフルーツを使ってあげると、圧倒的にフレッシュな香りを残せる可能性が高まります。その分、フルーツについてる他の菌が入ったり、酵素が作用したりする可能性もあるのですが。

今回は、パイナップルとチェリーをどちらも発酵前から蜂蜜と混ぜて使用することにしました。どちらのフルーツも特徴がはっきりとしすぎていることや、硫黄臭い成分も多いので発酵前から使ってあげたほうが美味しくなるかな?と思いました。

出来上がりを見ると、発酵前から使ってよかったな~と思ったんですが、とんでもないアクシデントも発生してました。

"Stuck"
詰まること、流れが止まること

お酒作りでは、よく"Stuck(スタック)"という表現が出てきます。発酵が途中で止まってしまうこともスタック、お酒が配管に詰まってしまうこともスタックといったりします。今回は、まさにパイナップルが配管に詰まりまくってスタックしちゃいました。台湾産パイナップルは芯まで食べられることが特徴で、芯までふんだんにミキサーにかけて使用しました。その芯がなかなか強烈でした。なるべくジューシーな口当たりにしたいなと思って、果肉もなるべくタンクに入れようと考えていたのですが、見事に配管にパイナップルが詰まってしまいました。意外とさっくりトラブルを解決することはできたのですが、詰まったときの冷や汗はほんとに忘れられません👐笑

色々と手間暇かかったミードであるんですが、なんとかなんとかボトルに詰めるところまでいけました。はっきりとした鮮明な薔薇色が美しく、梅雨時のムシっとした空気を一掃してくれるんじゃないでしょうか!

 

醸造担当 やざわ