〈Brewer's Note 〉This is it

1年半振りにThis is itを仕込みました。初めましての方に説明すると、これは僕たちがANTELOPEを創業して一番最初にリリースしたミードです。低アルコールで、ガス付き、蜂蜜の甘味を残したフィニッシュ。

「ミード醸造所なんだし、蜂蜜感あるやつ作ったほうが良いよな」

っていう発想を忠実に再現した1本で、色んな紆余曲折を経て、いま再び戻ってきました。

〈Elementary→High School〉

ANTELOPEが動き出した頃は間違いなくミード学校1年生だったに違いない。市場の動きも見えないし、自分たちが作りたいミードの方向性だってがっちり決まっていなかった。

This is itは、そんな中で生まれた第一期生のミード。

蜂蜜を使っているんだから、それらしい1本が必要なはずだと。ビール醸造も並行して行う可能性も考慮して取得した発泡酒免許は、原材料に大麦麦芽を使用する必要があった。もちろん税制上は300Lの仕込みに対して大麦1粒でも使えばokなので、グレーな作りをすることももちろんできた。ただ、麦芽が持つ酵母への栄養素はとても多く、それを活かすことがこれまでビールを勉強してきた自分の役目でもあるような気がして、300Lに対して5kgの麦芽を使用した。

工場を稼働してから長らく定番として存在したThis is itですが、色んなミードを作っていく中で唯一このミードだけが「本当に作りたくて作った1本なのか」という疑問にぶつかることになりました。マーケットインかプロダクトアウトかなんて二者択一じゃないのはもちろんわかってるけど、それでもこのミードだけはマーケットイン的な要素が大きすぎた気がして、製造を1年半前にストップしました。

しかし、この1年間で色んなお客様から「This is itはもう作らないのですか?」という声を聞きました。少しずつこのミードが持つ潜在的な魅力に向き合うことができて、ようやく「作りたくて作る」ところまでこれました。分かりやすい味わいですが、それでいいのかなって。初めましての人も、ご無沙汰しておりますの人もみんな仲良く乾杯してくれたらいいな、なんて。

〈Tasting Note〉

蜂蜜の優しい甘味に懐かしさを感じる1本。フルーツやスパイスを使わないはちみつと酵母と水を主体としたスパークリングミード。はちみつ本来のやさしい甘味が感じられます。普段お酒をあまり飲まない人も、お酒が好きな人もみんなが楽しめるような風合いです。

スタイル:Sparkling Mead

アルコール: 6%

pH: 3.67

残糖: 75.0g/L

内容量:500ml

蜂蜜に甘味を感じるので焼き立てのパンや、ハードチーズはもちろん生ハムや燻製とも◯

〈Mead making〉

1年半のレシピと全く一緒です。何も変わらずの仕込みを行いましたし、きっとこれからも大きなブラッシュアップはしないと思います。

麦芽をプロテインレストして、引き抜き、蜂蜜を入れてから低温殺菌。イーストはEC1118。残糖が75g/Lのところでフィニッシュ。火入れをしてガス付けをして、ボトリング。

ミャンマー産の蜂蜜の苦味や、麦芽のほんのりとしたニュアンスがビールっぽいと表現されるときもあるが、こんなに甘いビール一般的ではないよな?といつも心で思っているが、それはそれで良いのです。

変える良さもあれば、変えない美学もあるような。そんなことを思ってミード学校高学年くらいまでは成長できた2年間かなと、勝手に自分たちを鼓舞しています。